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レビュー|王妃が沈黙の裏に隠したもの『王妃の大罪』:明七

ライトノベル

こんな人におすすめしたいTL小説

  • 重厚な恋愛物語が好きな人
  • 政治×恋愛の緊張感を味わいたい人
  • ワケあり再会もの・溝のある夫婦ものが好きな人

あらすじ
「この子の父親はあなたじゃないわ」

政略結婚で結ばれたものの愛し合っていたカティアとロルフィー。しかし跡継ぎとして生まれた赤子に王族の血を引く印はなかった。カティアは姦通罪で王妃の座を追われ、孤島の修道院に幽閉されてしまう。

時は流れ、四歳の娘アニとともに静かな生活を送っていたカティアの前に突然ロルフィーが現れる。悪女と断罪された王妃と裏切られた王。

引き裂かれた二人の運命は!?
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感想
四歳の娘アニと静かに暮らすカティアのもとへ、突然ロルフィーが現れる。
そこから読者は、この物語に隠されていた“別離の理由”が、表向きの「姦通罪」だけではなかったことを徐々に悟ることになります。

実は、王ロルフィーは王でありながら、国を実質的に動かしている強大な宰相の存在に逆らえなかった過去を抱えています。

そして後半で読者は、カティアがただ追放されたのではなく、
“何かを守るために、あえてロルフィーから離れる選択をせざるを得なかった”
という事実が、慎重に描かれていることに気づかされます。

それは愛の終わりではなく、
母として、ひとりの女性として、
どうしても背を向けなければならない事情があったのだと、徐々に感じる描写。

カティアが娘アニを慈しみながら育てている姿にも、
「失ったもの」と「抱きしめているもの」の両方が感じられ、
その静かな強さが読む人の胸に残ります。

この“彼女だけが抱えてきた真実”は、
後半に向けて少しずつロルフィーにも伝わっていきます。

真相そのものは物語の核心なので言いませんが、
ロルフィーは自分が見落としていた過去に向き合い、
それを歪ませていた権力の存在を知ることになります。

そして彼は、王としてではなく一人の男として、
「本当に守るべきものは何なのか」
をようやく理解し始める。

彼の決意が固まった後の展開は、一気に物語が動き出します。
これまで静かに積み上げられてきた感情の伏線が、
怒涛の勢いで回収されていく。

ネタバレを避ける範囲で言うなら、
ロルフィーは“奪われたもの”を取り戻すために、
カティアにある約束をし、
そのために権力の中心へと向かっていく。

カティアの未来のために、
そして過去の過ちを終わらせるために。

ロルフィーの行動は、
謝罪ではなく、
決意と覚悟として描かれており、
この物語が単なる恋の続きではなく、
「罪と赦しの物語」 であることが読み手にも伝わります。

終盤に向かうにつれ、
断罪によって引き裂かれた二人の“本当の関係”が少しずつ回復へ向かい、
カティアが背負ってきた痛みの行き場が、ようやく見つかっていきます。

静かな前半から一転、
後半の展開は力強く、希望の光が射していくよう。

ただ甘いだけではなく、
ただ重いだけでもない、
「愛が正しい形へ戻っていく物語」
としての読後感が、とても深い一冊でした。

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